セアカゴケグモの生態
オーストラリアでは、巣は屋外の物置や玄関の外の隅、庭石の間やくぼみ、屋外便所や水差しの如露の中に作られている、という報告があります。日本ではすべて戸外で見つかっており、家の中で見つかったことはありません。大阪府下では、日当たりの良い開けた場所におり、人家密集地や日陰にはいません。少し湿った、下に土砂が溜まっている側溝、排水溝の蓋の裏側、庭や花壇のコンクリートブロックの隙間、建物の隅や下のくぼみ、墓石の間、フラワーポット、プランター、植木鉢の下、地表近くのかたい人工物のすきまなどに巣を作り、木や草には作りません。巣の網にゴミをつけていることが多いです(西川・冨永,1996)。
同じような場所によく似た巣を作るオオヒメグモが、セアカゴケグモの雄や若い雌に似ていて、よく間違われますが、腹部に赤い紋があるので区別できます。ただしこの紋が薄くて白に近い場合もあります(西川・冨永,1996)。
気温10゜C以上で成長し、成体までに要する期間は、最適温度の25゜Cで雄が28-45日(通常5齢)、雌が45-74日(7-8齢)です(Forster, 1984;夏原,1996)。餌としてシジミチョウの一種のハネをちぎって与えたところ、糸を巻きつけた後に咬みついて、付近をうろうろ歩きまわり、また咬みつくという行動を3回ほど繰り返しました。巣にはいろいろな昆虫の死体が獲物としてかかっており、日本ではヤマトスナゴミムシダマシ、オカダンゴムシ、ヤケヤスデ、クロゴキブリ、トノサマバッタなどですが、それら全てが摂食の対象となっているかは不明です。糸でつり上げられたまま死んだものや、クモが不在の巣に後で潜り込んだものもあり得ます。摂食の対象になったか否かは注意深く観察する必要があります。
天敵としては,他のクモ類,ジガバチ類,ヤドリバエ類が可能性として高いようです。オーストラリアでは、Badumna loonginquus (ガケジグモ科)の巣網によく捕らえられており(夏原,1996)、日本ではクロガケジグモがこのクモを食べていたという観察もあります。塀の上の方にはクロガケジグモが、下の地表に近いところにはセアカゴケグモが棲み分けているようにも見えます(西川,1995)。高石市の高砂町では、イエオニグモがセアカゴケグモと近接して巣を作っていました。
オーストラリアでの繁殖時期は12〜2月の真夏であり、日本の気候に馴れれば、6〜8月が繁殖時期になるかもしれません。日本では、11〜12月の調査で成体も見られましたが、幼生が多く、卵嚢もかなりの数が観察されました。繁殖時期の馴化が完全に終わっているとは思えません。12月初旬の暖かい日には雌が日光浴をしたり、幼生が分散していたという観察もあります。卵嚢から出た2齢の幼生が集団で上の方へ登り、石や草を登りつめると、尻から出した糸によって空中に舞い上がるバルーニングをするという情報もあります(夏原,1996)。一方、熱帯に分布するクモはほとんどバルーニングをしないことが常識で、日本でもバルーニングは正式に観察されていません。バルーニングの習性をもつか、あるいは普通に見られるか否かは、生物地理学的な観点からも重要ですので、早急に解明が必要です。
雌は巣網に獲物がかかった時と、卵や幼生がいる時は攻撃性が強いです。人間を襲うような攻撃性はありません、昆虫以外の獲物に対する執着性は強く、手の上で遊ばせていて咬まれた例があります。擬死を長い間することがあるので、注意が必要です。
セアカゴケグモ毒性
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ゴケグモ類を見つけたら
ゴケグモ類に咬まれたら