雌が雄を喰うという習性(1)

「『ゴケグモ』という名称は交接後にメスがオスを喰い殺す習性に由来する」という語源論が世間では流布しています。「『ゴケグモ』は女性蔑視」とする意見もここから出たのではないかと思います。

「メスがオスを殺して、結果的に“未亡人”になったから後家蜘蛛」という、回りくどい語源論は学界の定説というわけではありません。命名者や命名者から直接話を聞いた人の証言が残っているわけでもありませんので。1995年の「毒グモ騒動」の際に、語源説として紹介された一つが、あまりに面白かったので、マスコミに乗って広まったというのが実相です。

日本のクモ研究の第一人者、八木沼健夫氏が九州大学の平嶋義宏(昆虫学者、ラテン語・ギリシャ語に詳しい)・大熊千代子(クモ学者)両氏と共に編纂した『クモの学名と和名』では、“widow spiderの訳語”(73頁)としているだけで、その由来については触れていません。

語源の問題に関しては、別の機会に述べさせていただくとして、今回は、この一見ショッキングな習性について述べることにします。(未完)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です