INSBASE96のリリースバージョンVersion 6.970327が完成しました.MS-DOS版Version
4.17,及びベータバージョンに比べてもいくつかの点で改良がなされています.特にベータバージョンより入力のしやすさを追求し,入力専用フォームを作成し,効率よい大量データの入力を可能にしました.例えば,同じ場所で同じ時に採集された同じ種類の昆虫を,成虫5♂3♀,幼虫2♂5♀,羽化殻10exs.というような場合,これらを一気にファイルに書き込める「集計入力機能」を持たせました.この場合合計25のデータが一気に書き込まれます.
ベータバージョンで留保していた,印刷関係のトラブル(分布図の印刷,テキスト関係の印刷のフォントサイズ,フォント種類の問題等)は,当開発者,青木のコンピュータのプリンタドライバの問題ということがはっきりしました.ほとんどすべての問題が解決されています.ただ,グラフコントロールの精細印刷だけは解決できておらず,今回はこれらグラフのの印刷は簡易印刷だけとなっています.簡易印刷とは,フォームのハードコピーと考えていただければ結構です.これでもかなり精細なグラフが印刷可能です.
MS-DOS版高速インデックス作成ユーティリティは今回は配布できません.
それではINSBASE96 の概要を紹介します.
データの入力については,ベータバージョンではまだ十分に機能的とはいえない部分がありました.データベースの最も大変な仕事はデータ入力であることを再認識し,入力専用フォームを新たに付け加えました.操作方法はカード画面におけるものとほとんど同じですが,「集計入力機能」を設けるなど,入力作業に集中できるような配慮がなされています.ぜひ一度利用してください.
データ入力は可能な限りマウス操作でできるようにしました.今までマウスで選択して入力していた分類1,分類2,国名,ステージ,性別,都道府県名,市町村名はもとより,他の項目も一度入力した内容を学習することにより,リストボックスによる選択が可能になりました.これにより,頻繁に入力する地名,採集者,備考などが手軽に入力できるようになりました.
項目数の不足を訴える声が多かったので,メモ帳を用意しました.備考1欄にテキストファイルのパスを書き込み,そのテキストファイルに書きたい内容をいくらでも書くことが可能です.INSBASEのデータファイルとこのテキストファイルはリンクされており,常に参照されます.またこのメモ帳には一定の形式のヘッダをつけることが可能で,同じ形式で備考欄の拡張として利用できます.
また同様の方法でビットマップファイルの指定も可能で,データと同時に画像も表示できるようになりました.これを使えば写真のデータ整理もできます.
レコードの追加は,今までと同様,「追加」「修正」「削除」の他に「挿入」という方法を設けました.これによって,ファイルの一番最後以外のところにも新しいレコードを挿入できるようになりました.
一覧表はより自由度が高く設定できるようになりました.Ver.4.17と同じく,コードによって項目順序,項目幅を設定するのですが,項目幅については画面を見ながらマウスで修正ができるようになりました.また,一覧表表示でデータの修正ができるようになっています.さらに一覧表画面の大きさを小さくすることができるように,フォントサイズの指定や項目内の文字列を2段表示できるようにしました.これによって,解像度の低いノートパソコンのような場合でも,かなりの情報を一覧表で表示できるようになりました.
ただしスクロール速度やデータの一覧表への読み込み速度などが,言語仕様の関係でVer.4.17よりかなり遅くなってしまいました.
INSBASE Viewer Ver.1 for Windows 3.1の移植が完了しました.基本的にはVer.1と同じ機能を備えています.オプション地図の作製のためのユーティリティプログラムとしてMakeMap96.exeもあわせてWindows95に対応させています.種名のインデックスファイルを作成して開いておけば,分布表示は高速になります.分布図は,クリップボードを介して他のアプリケーションに貼り付けたり,ビットマップファイルとして保存したり,また最適の解像度での印刷が可能です.
これもINSBASE Viewer Ver.1 for Windows 3.1の移植です.基本的にはVer.1と同じ機能を備えています.今回のリリースバージョンでは簡易印刷しかできません.
データファイルは一度に一つしか開けません.しかし普通のアプリケーションのように,「ファイルを開く」コマンドにより,どのファイルにもアクセスできるようになっています.「新規作成」コマンドも設け,ワープロ感覚で新しいファイルが作れるようになりました.また,データが壊れるトラブルの報告が多かったので,テンポラリファイルを開いて,実行中はオリジナルのデータファイルを保存しておくようにしました.そのデータファイルを閉じるときに更新するかどうかを問い合わせるようになっています.このため,起動時にはデータファイルのコピーを作ることになり,若干の時間がかかります.
メニューに頻繁に使うデータファイルを7つまで登録できますので,マウスクリックだけで新しいデータファイルに切り替えることができます.
スタートアップファイルを登録すれば,起動と同時によく使うデータファイルを開くことができます.
ベータバージョンの簡易マニュアルで述べていたINSBASE96の複数起動はinsbase.iniファイルの競合が起きるので,行わないでください.
大きなデータベースを扱うにはインデックスは必要不可欠のものです.インデックスの作成も簡単にできるようになりました.また複数項目を結合したインデックスも作成できるようになりました.例えば,種名+地名でインデックスを作成すると,種名と地名がソートされます.ただし,大きなファイルでは「べらぼうに」時間がかかります.食事前や風呂に入る前に実行させるのがよいでしょう.レコード数の少ない(数百件)ファイルであれば,短時間で作成可能です.
Ver.4.17ではインデックスファイルを開いているときはデータの修正や追加ができませんでしたが,本バージョンではできるようになりました.またデータの追加と同時にインデックスの更新を行うオプションもつけています.データ件数が大きくなると使いづらくなりますが,使っていただきたい機能です.
分布表示や消長図,垂直分布図は,インデックスファイルを開いておくと高速に表示が完了します.
Ver.4.17と同様に他のデータファイルに結合ができます.この際,1レコードずつ確認しながら手動で結合ができます.検索条件だけではデータの選択がうまくいかないときには,これで新しいデータファイルに必要なレコードだけが結合できるようになります.
これはかなり大きく改善されました.コードを書くことによって,かなり自由な形式のテキストが作成できます.Ver.4.17の出力形式は基本的にすべてサポートしています.レポート出力もできるようになり,津田氏のREPOIBに近い能力を持つ簡易出力もできるようになりました.検索条件をつけて出力したり,1レコードずつ確認しながら手動で出力もできます.
これは劇的に改善しました.項目数の不足しているテキストも,項目の順序が違うテキストもINSBASEのデータファイルに変換できるようになりました.ただし,登録番号自動発生というしばりがあるために,日付だけは定められたフォーマットで用意されていなければなりません.Ver.4.17の変換形式もサポートしています.
要望のあった1レコードのみの即席印刷ができます.また,テキストファイルへの出力と同じことが,プリンタへの出力としてサポートされています.コードを書けば,かなりの形式の印刷も可能となります.基本的には「テキストファイルへの出力」がそのままプリンタへの出力として実行できます.
フォントのサイズや種類の指定も可能です.
レコードの検索はいくつかの改善を加えました.今までANDのみの条件設定しかできませんできたが,ORの設定ができるようになりました.つまり,「ベッコウトンボ」と「ヨツボシトンボ」のどちらかを選べということができます.またNOT条件の設定や日付や標高などの範囲指定もできるようになっています.部分一致,完全一致,前方向検索,後方向検索,大文字小文字を区別しない,全角半角を区別しない,空白を無視するなどのオプションもつけました.検索しながらウィンドウを切り替えて,修正,追加などもできます.これはVer.4.17では入力モードに戻らなければできませんでしたが,検索しながらデータを追加・修正・削除できます.
ワープロライクな文字列の検索,置換ができるようになりました.
Ver.4.17にあった編集機能は基本的にはすべてサポートしました.項目間の移動,交換,コピーや,特定項目への同一内容入力,特定レコードの一括削除など,すべて,11.で述べた検索をかけながら実行できます.また,削除マークのついたレコードの復活もできますし,削除マークのついたレコードの完全抹消も簡単です.
INSBASE96はWindows95専用の32ビットアプリケーションで,Windows3.1では動作しません.ハードウエアはWindows95が走っている機種であれば動作します.必要な周辺機器はハードディスク,マウス,プリンタという今では必需品ばかりであり特別なものはありません.メモリは多いほど望ましいことは言うまでもありません.特にインデックスを作成するときには,大きな配列を定義しメモリ上に展開するようなコードになっていますので,スワップを防ぐためにもより大きなメモリが欲しいところです.この場合だいたい(レコード件数)×(インデックスのバイト数+
4)×2程度のメモリ領域を使用します.Visual Basicは,原則的にコードでメモリ管理ができないので,メモリを使いきると実行時エラーが出てプログラムがストップします.スワップファイルなどできるだけ広いメモリ領域を定義できるようハードディスクの容量を十分確保しておいてください.
今回の開発で,Visaual Basic (VB)の良い点と弱点が見えました.VBのバージョンであるINSBASE96では,データ件数を少なくして,細かくデータファイルを分けるような使い方がベストであるように感じます.コーダー本人は6000件以上のデータファイルを扱っていますが,インデックス作成やその他の動作が遅く,若干いらいらしてしまうことがあります.よく加工するファイルのデータ件数は1000件以下にして扱うような使用法を考えた方が良いと思います.つまりデータを小さなデータフィルに分割して貯めていき,必要であればそれらを結合して大きなデータファイルとするような方法がベストでしょう.結合してできた大きなデータファイルには,インデックスをつけておくべきです.