「直訳」と「意訳」(1)

1月15日付の『雌が雄を喰うという習性(1)』で八木沼氏が『クモの学名と和名の中で』、「ゴケグモ」とは“widow spiderの訳”と記述している、と書きました。これは、“ ”の中に入れたように、大意であって、そのままの表現ではありません。

実際には、「和名はその直訳」と表現されています。

この「直訳」という表記はあまり感心しません。これは、通常の翻訳作業の際の用語で、主に逐語訳を差しますが、一般に、「安易で稚拙な訳」というニュアンスがあります。「直訳」に対して、このことば(単語・文)が持つ文化的な背景や用法を考慮した的確な訳を「意訳」と言っています。

外国語を日本語に訳すに当たって、単語を置き変えるのは自然な作業です。逐語訳だからと言って、「直訳」と断じるのは早計です。

大分以前に、trap door spiderを「しかけとびらぐも」と訳した人がいました。「トタテグモ」という和名が定着しているのですから、こちらを使用するべきでした。また、この人はorb web(オニグモやコガネグモが作る円網)を「球形の網」と訳していました。専門外の人がクモ学者に相談せずに、いきなり科学雑誌に寄稿したのは、些か軽率でした。これなどは正に直訳と言えます。(未完)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です