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ゴケグモ類の毒成分 :: 昆虫情報処理研究会

xpwiki:ゴケグモ類の毒成分

ゴケグモ類の毒成分 anchor.png[1]

毒グモ騒動の主役であったセアカゴケグモを含むゴケグモ類の毒成分の説明です。

クモは全て肉食性で、ウスグモ科以外のクモは、昆虫等の獲物を麻痺させる程度の毒をもっています。口の両側に一対の牙を持ち、毒嚢で作られた毒液を毒腺経由で牙に送り、獲物の体内に注入します。この毒液は本来は消化液で、口外消化をして養分を吸収するためのものです。人間に対する攻撃性は本来なく、防御のために咬んでも、牙が小さく、人の皮膚が厚いため毒を注入することができません。そのため、人間に重大な危害を与える有害なクモの種類は少ないです。日本では、約50例のクモによる被害が知られており、そのほとんどがカバキコマチグモ(フクログモ科)による咬症です(原田(1995)).その内の2例がアカオビゴケグモ、数例がセアカゴケグモによるものです。

クモの毒の中に含まれる蛋白質には、種類により異なりますが、アルカリ性ホスファターゼ、エステラーゼ、昆虫に対する毒(アルジオピン等)、神経毒(α-ラトロトキシン、β-ラトロトキシン)、ホスホジエステラーゼ、プロテアーゼ、キニナーゼ、5'-リボヌクレオチドホスホヒドラーゼ、スフィンゴミエリナーゼD等があり、ゴケグモ属の毒液は強力な神経毒を含んでいます。咬まれると、激痛を伴いますが、注入される毒の量が少ないので、死亡する人はまれです。

ゴケグモ属の神経毒は、三種類の作用を持ちます(Tu,1996)。

1)神経伝達物質であるアセチルコリンの神経細胞末端からの完全放出を引き起こし、その放出はα-ラトロトキシン投入後6分で極大となる。そのため咬まれた動物はけいれんを起こす。

2)体内のいろいろな器官を調整している交感神経系の神経伝達物質であるカテコールアミンを、神経終末から完全放出させる。そのためかまれた哺乳動物の発汗を引き起こす。

3)昆虫の神経−筋肉連関作用をつかさどるグルタミン酸の伝達を妨害する。それで昆虫はクモにかまれると動けなくなる。これらの毒成分は、グルタミン酸の放出を促すものと、受容体を妨害するものの二種類があり、インドールや、芳香族基を含んだアミンで、アルジオピン、アルジオピニン、シュウドアルジオピニン、ネフィラトキシンなどである。これらの物質は人間では、グルタミン酸は主に脳内の神経伝達にたずさわっているので影響は少ない。

1頭のクモのもつ毒の量をマウスに対するLD50で割った致死指数は、ジュウサンボシゴケグモ0.404、ハイイロゴケグモ0.226、L. variolus 0.141、セアカゴケグモ0.120、クロゴケグモ0.106、L. bishopi 0.071であり(McCrone, 1964[2]等)、セアカゴケグモよりハイイロゴケグモの方がかまれた場合に毒性的には危険です。しかし、現実に咬まれた人の数と症状から判断すると、危険性の高さは、クロゴケグモ>セアカゴケグモ、アカオビゴケグモ>ハイイロゴケグモと考えられています。

セアカゴケグモ毒性[3]...セアカゴケグモの毒成分の解説です。

ゴケグモ類を見つけたら[4]

ゴケグモ類に咬まれたら[5]


Last-modified: 2009-09-13 (日) 14:22:48 (JST) (5337d) by kana